甲賀忍者とは？—戦国時代における影の武士たち

甲賀忍者（こうがにんじゃ）は、日本の戦国時代（15世紀後半～17世紀初頭）に活躍した忍者集団の一つで、現在の滋賀県甲賀市を中心とする地域を拠点としていました。伊賀忍者と並び称される彼らは、情報戦、潜入、破壊工作、暗殺などに優れ、時には戦国大名と同盟を結び、時には敵対勢力の撹乱に関与しました。

本稿では、甲賀忍者の起源、特徴、戦国時代における具体的な活躍、戦術や武器、そして江戸時代以降の運命について、詳細に解説していきます。

1. 甲賀忍者の起源と成り立ち

甲賀地方は現在の滋賀県南部に位置し、山々に囲まれた天然の要塞のような土地でした。伊賀と同様に、甲賀も外部勢力が容易に侵入できない環境にあり、独自の自治組織が発展する土壌となりました。

甲賀地方には、戦国時代以前から「甲賀五十三家」と呼ばれる土豪（小領主）たちが割拠していました。彼らは相互に連携し、戦国大名のような絶対的な支配者を持たず、「甲賀郷士（こうがごうし）」として独自の自治組織を築いていました。

この甲賀五十三家は、互いに協力しながら戦術を磨き、必要に応じて他国の戦に介入することで、忍術を発展させていきました。

甲賀忍者は戦術において、伊賀忍者と共通する部分も多いものの、独自の戦法も持っていました。

甲賀忍者も伊賀忍者と同様、多様な忍具や武器を使用しましたが、特に以下のようなものが特徴的でした。

甲賀忍者は、近江（滋賀県）の戦国大名六角氏と密接な関係を持っていました。六角家の家臣として、情報戦や破壊工作を担当し、六角氏が大名として成長するのを助けました。

・六角義賢（1521～1598）と甲賀忍者
六角氏が織田信長や浅井長政と戦った際、甲賀忍者は敵の陣営に潜入し、偽情報を流したり、内部工作を行ったりして支援しました。しかし、1573年に六角氏が織田信長に敗れると、甲賀忍者たちは新たな活躍の場を求めることになりました。

六角氏滅亡後、甲賀忍者の多くは織田信長の配下に加わることを拒み、独立勢力として活動を続けました。これが信長の怒りを買い、天正伊賀の乱（1579～1581）の一環として、甲賀地方も攻撃を受けました。

・甲賀忍者の反撃
織田軍が甲賀を攻めた際、甲賀忍者は山岳戦とゲリラ戦を駆使して抵抗しました。甲賀五十三家の結束力を活かし、織田軍に大きな損害を与えましたが、最終的には織田軍の大軍勢に屈し、多くの忍者が討たれました。

甲賀忍者は、伊賀忍者とともに徳川家康に仕え、1600年の関ヶ原の戦いでは家康のために諜報活動を行いました。

この功績により、家康は江戸幕府を開いた後、甲賀忍者を**幕府直属の「御庭番」**として採用しました。

江戸時代に入ると、甲賀忍者の役割は戦争から情報収集・監視活動へと変化しました。

しかし、江戸時代が平和に向かうにつれ、忍者の必要性は減少し、次第に表舞台から姿を消していきました。

甲賀忍者は、戦国時代において情報戦やゲリラ戦を駆使し、多くの戦で影の立役者となりました。彼らの戦術は、江戸時代以降の情報収集や諜報活動に大きな影響を与え、日本の軍事史に深く刻まれています。

現在も、甲賀忍者の伝説は日本文化の一部として語り継がれ、世界中の忍者ファンに影響を与え続けています。