第1章：山県昌景の生涯

山県昌景（やまがたまさかげ）は、戦国時代の武将であり、武田信玄・武田勝頼に仕えた名将です。彼は、武田家最強の精鋭部隊「赤備え」を率いたことで知られ、戦場での勇猛な戦いぶりと冷静な戦術眼を兼ね備えた武将でした。

本章では、昌景の出生から、武田家の重臣となるまでの生涯を詳しく解説します。

1. 山県昌景の出生と出自（生年不詳 – 1540年代）

1-1. 生誕と出自

山県昌景の生年は不詳ですが、1500年代前半に甲斐国（現在の山梨県）で生まれたと考えられています。

彼は元々、「飯富（おぶ）氏」の出身とされ、兄（もしくは一族）には武田家の重臣 飯富虎昌（おぶとらまさ） がいました。

項目	内容
生誕	1500年代前半（生年不詳）
出身地	甲斐国（現在の山梨県）
出自	飯富氏（武田家家臣）
初名	飯富源四郎（おぶげんしろう）
兄（または親族）	飯富虎昌（武田家の重臣）
仕官先	武田信玄

当時の飯富氏は、武田家の有力な家臣団の一つであり、昌景も幼少の頃から武田家に仕えることとなりました。

1-2. 武田信玄の家臣としての活動

昌景は、武田信玄の家臣として戦場での経験を積み、徐々に頭角を現していきます。

1540年代～1550年代には、兄・飯富虎昌とともに武田軍の一員として戦に参加し、軍事の基礎を学びました。

年代	主な出来事
1540年代	武田家の家臣として活動
1550年	川中島の戦い（第1次）に従軍
1554年	甲相駿三国同盟が成立し、武田家の領国が安定

特に、1554年に成立した「甲相駿三国同盟（武田・北条・今川の同盟）」により、武田家の勢力が拡大し、昌景も武将として活躍する機会を増やしました。

2. 兄・飯富虎昌の死と「山県昌景」への改名（1565年）

2-1. 武田義信事件（1565年）と飯富虎昌の死

1565年、武田信玄の嫡男・武田義信が家臣団とともに謀反を企てました（武田義信事件）。

項目	内容
事件	武田義信が信玄に反抗し、謀反を企てる
関与した家臣	飯富虎昌（昌景の兄）
結果	義信は廃嫡、虎昌は処刑

武田信玄は義信を廃嫡し、これに関与した家臣である飯富虎昌を処刑しました。

2-2. 「山県昌景」への改名

この事件の後、昌景は「飯富」の姓を捨て、「山県昌景」と改名しました。

項目	内容
旧名	飯富源四郎
新名	山県昌景
改名の理由	兄・虎昌の不名誉をそそぐため、武田家への忠誠を示すため

これは、兄の処刑という汚名をそそぐとともに、武田家への忠誠を改めて誓う意味があったとされています。

この改名の後、昌景は武田信玄の側近として急速に台頭し、家中での地位を確立していきます。

3. 武田家の主力武将としての活躍（1565年－1575年）

3-1. 「赤備え」の指揮官に

昌景は、兄・虎昌が率いていた「赤備え」の部隊を引き継ぎました。

赤備えの特徴	内容
甲冑	すべて赤色で統一
兵の質	武田軍の精鋭部隊
役割	先陣を務め、戦場の突破口を開く

この赤備えは、後に徳川家の井伊直政に継承されるほどの精鋭部隊であり、昌景はそのリーダーとして数々の戦で活躍しました。

3-2. 各地の戦での活躍

昌景は、武田信玄の指揮のもと、多くの戦いに参戦しました。

年	戦い	昌景の役割
1569年	三増峠の戦い	北条軍の退路を遮断し、大勝に貢献
1570年	野田城・福島城の戦い	織田・徳川勢と戦う
1572年	三方ヶ原の戦い	徳川家康軍を撃破し、大活躍
1574年	高天神城攻め	武田軍の先鋒として活躍

中でも、三増峠の戦い（1569年）や三方ヶ原の戦い（1572年）では、赤備えの力を存分に発揮し、武田軍の勝利に貢献しました。

この時期には、昌景は武田家の中でも最重要の武将の一人として活躍していました。

3-3. 最後の戦い「長篠の戦い」（1575年）

1575年、武田勝頼が織田・徳川連合軍と戦った**「長篠の戦い」**において、昌景は先陣を務めました。

項目	内容
戦い	長篠の戦い
敵	織田信長・徳川家康連合軍
結果	武田軍の壊滅、昌景は戦死

昌景の赤備えは奮戦しましたが、織田軍の鉄砲隊の三段撃ちにより、多くの兵が討たれ、昌景自身も戦死しました。

この戦いを最後に、武田家の軍事的な優位性は失われていきます。

4. まとめ

山県昌景は、武田信玄・勝頼に仕えた猛将であり、武田家の最精鋭部隊「赤備え」を率いた名将でした。

兄・飯富虎昌の死後、山県昌景と改名し、武田家の重臣に
「赤備え」の指揮官として活躍し、多くの戦で勝利を収める
三増峠の戦いや三方ヶ原の戦いでの活躍が特に有名
1575年の長篠の戦いで戦死し、赤備えの時代が終焉を迎える

彼の戦いぶりと統率力は、戦国時代屈指のものとして、今なお語り継がれています。

第2章：「赤備え」の精鋭部隊

山県昌景（やまがたまさかげ）は、武田信玄・勝頼に仕え、武田家最強の精鋭部隊「赤備え（あかぞなえ）」を率いたことで名を馳せました。赤備えは、戦国時代において最も強力な軍団の一つとされ、後に徳川家の井伊直政に継承されるほどの伝説的な存在でした。

本章では、赤備えの成立と特徴、山県昌景による指揮、戦国時代への影響について詳しく解説します。

1. 赤備えとは？

1-1. 赤備えの由来

赤備えとは、甲冑や旗指物（はたさしもの）、軍装をすべて赤色で統一した精鋭部隊のことを指します。
戦場で目立つ赤色をまとった部隊は、並の兵ではなく「選ばれた精鋭部隊」であることを示し、敵に恐怖を与えました。

項目	内容
甲冑の色	赤色
旗指物	赤色に統一
編成	武田軍の最精鋭部隊
役割	先鋒・突撃・戦場の突破口を開く

戦国時代の日本では、甲冑の色は武将や部隊の個性を示すものとされていましたが、赤色は特に目立つため、「恐れを知らぬ精鋭集団」の象徴とされました。

1-2. 赤備えの起源

赤備えの起源は、武田信玄の重臣であり、山県昌景の兄（もしくは一族）である**飯富虎昌（おぶとらまさ）**が編成した部隊にあります。

武将	赤備えとの関係
飯富虎昌	武田信玄の命で、赤備えを編成（初代指揮官）
山県昌景	飯富虎昌の死後、赤備えを引き継ぎ、さらに強化
井伊直政（徳川家）	赤備えを継承し、徳川家の精鋭部隊に発展

元々は飯富虎昌が指揮していた部隊でしたが、1565年に飯富が武田義信謀反事件で処刑されると、山県昌景が部隊を引き継ぎました。

昌景は、赤備えをより精強な部隊へと成長させ、武田軍の「先鋒部隊」として数々の戦場で活躍しました。

2. 山県昌景の赤備えの特徴

山県昌景が率いた赤備えは、単なる派手な装いではなく、戦国時代屈指の精鋭部隊として、圧倒的な戦闘力を誇っていました。

2-1. 精鋭部隊としての厳選

山県昌景の赤備えには、特に優れた武勇を持つ者のみが選ばれました。
選抜基準は厳しく、並の兵では入ることができませんでした。

選抜条件	内容
武勇	一騎討ちや集団戦闘で優れた実績を持つ者
統率力	部隊をまとめる能力のある者
忠誠心	武田家への忠誠が厚い者
戦闘経験	多くの戦を経験し、生き残った者

そのため、赤備えは武田軍の中でもエリート中のエリートが集まる部隊となりました。

2-2. 戦場での戦術

昌景は、赤備えを単なる「目立つ部隊」としてではなく、戦略的な役割を持つ精鋭部隊として運用しました。

戦術	内容
先鋒部隊	戦場の最前線で突破口を開く
奇襲・強襲	迅速に敵の弱点を突き、一気に崩す
騎馬戦術	武田軍の伝統である騎馬戦を活かした機動戦
鉄砲・弓兵との連携	歩兵・騎馬・鉄砲を組み合わせた攻撃

この戦術により、赤備えは戦場の最前線で圧倒的な突撃力を発揮し、敵陣を崩壊させる役割を担いました。

3. 赤備えが活躍した戦い

山県昌景が指揮する赤備えは、数々の戦いで武功を挙げました。

年	戦い	赤備えの活躍
1569年	三増峠の戦い	北条軍を包囲し、勝利に貢献
1572年	三方ヶ原の戦い	徳川家康軍を撃破
1574年	高天神城攻め	先鋒として敵陣を突破
1575年	長篠の戦い	織田軍の鉄砲隊と激突し、壮絶な戦死

特に、三方ヶ原の戦い（1572年）では、徳川家康軍を撃破し、家康自身が命からがら敗走するほどの活躍を見せました。

しかし、1575年の長篠の戦いでは、織田信長の鉄砲隊の三段撃ちにより、赤備えは壊滅的な損害を受け、昌景自身も戦死しました。

4. 赤備えの継承と影響

赤備えは、山県昌景の死後も「最強の精鋭部隊」としての伝統を受け継がれました。

武将	赤備えの継承
山県昌景	武田家の赤備えを率いる
井伊直政（徳川家）	徳川家の赤備えを編成
井伊直孝	大坂の陣で赤備えが活躍

昌景の死後、赤備えの戦術は、徳川家康の家臣・井伊直政に引き継がれました。
直政は、武田家の旧臣を配下に加え、同じく赤色の軍装を施した精鋭部隊を編成しました。
この赤備えは、江戸時代においても「最強の軍団」として知られ、大坂の陣（1614-1615年）でも活躍しました。

5. まとめ

山県昌景の「赤備え」は、単なる派手な装いではなく、戦国時代最強クラスの精鋭部隊でした。

武田信玄の命で、飯富虎昌が編成し、昌景が指揮を継承
最前線で戦うエリート部隊として、数々の戦で活躍
長篠の戦いで壊滅するが、その戦術は井伊直政に継承
後の江戸時代に至るまで「赤備え」は最強の象徴となる

赤備えは、戦国時代の精鋭部隊の象徴として、今も語り継がれています。

第3章：山県昌景の軍事戦略と統率力

山県昌景（やまがたまさかげ）は、戦国時代における最強の精鋭部隊「赤備え」を指揮した名将であり、武田信玄・武田勝頼の重要な軍事司令官として活躍しました。彼の戦い方は、単なる武勇だけではなく、機動力を活かした戦略、兵の士気を高める統率力、敵の戦術を見抜く分析力など、優れた戦略的思考に基づいていました。

本章では、山県昌景の軍事戦略、戦術、統率力について詳しく解説します。

1. 山県昌景の軍事戦略

1-1. 戦場での役割

山県昌景は、武田軍の中で**「先陣を務める武将」**としての役割を担っていました。特に、彼が指揮する赤備えは、戦場で以下のような重要な役割を果たしました。

役割	内容
先鋒部隊	戦場の最前線で敵陣を突破する
騎馬戦術の活用	武田軍の伝統的な騎馬戦術を最大限に活用
奇襲・側面攻撃	敵の戦列を崩し、撹乱する
城攻めの先陣	築城技術を駆使し、攻城戦で活躍

昌景は、戦場では機動力を活かし、迅速に敵陣を突破する役割を担っていたことが特徴です。

1-2. 騎馬戦術と機動戦

武田軍は、日本戦国時代の中でも特に「騎馬戦術」に優れた軍団でした。昌景の赤備えは、騎馬武者を中心に編成され、以下のような戦術を活用しました。

騎馬戦術	内容
中央突破	騎馬隊が一斉に突撃し、敵の陣形を崩す
側面攻撃	機動力を活かし、敵の側面を奇襲
撹乱戦術	速攻で攻め込み、敵を混乱させる

昌景は、戦場での柔軟な機動戦を得意とし、武田軍の戦術を最大限に活かしました。

1-3. 伏兵戦術と包囲戦

昌景は、騎馬戦だけでなく、伏兵を用いた戦術にも優れていました。彼が活躍した戦いの中で、特に有名なのが**「三増峠の戦い」（1569年）**です。

戦術	三増峠の戦いでの活用
伏兵戦術	峠の狭い地形を利用し、敵を誘い込む
包囲戦術	正面からの戦いだけでなく、側面からも攻撃
奇襲攻撃	退路を断ち、敵を完全に封じ込める

昌景は、単なる正面攻撃ではなく、地形を活かした戦術を巧みに使いこなす知将でもありました。

2. 戦場での活躍

2-1. 代表的な戦い

山県昌景は、武田軍の主力として多くの戦いに参加し、その戦術を存分に発揮しました。

年	戦い	昌景の活躍
1569年	三増峠の戦い	伏兵戦術を駆使し、北条軍を大敗させる
1572年	三方ヶ原の戦い	徳川家康軍を撃破し、家康自身が敗走
1574年	高天神城攻め	武田軍の先陣を務め、城攻めに成功
1575年	長篠の戦い	赤備えを率いて奮戦するが、戦死

特に、三方ヶ原の戦いでは、昌景の率いる赤備えが最前線で突撃し、徳川家康を窮地に追い込みました。

2-2. 戦術の特徴

昌景の戦い方には、いくつかの共通点が見られます。

戦術の特徴	内容
迅速な行動	敵よりも早く攻撃を仕掛け、主導権を握る
奇襲と伏兵	正面攻撃だけでなく、側面・背後からの攻撃を組み合わせる
士気の維持	兵の士気を高め、戦闘力を最大化
地形の利用	山岳戦や狭い地形を活かした戦術を展開

昌景は、戦場での柔軟な戦術運用を得意とし、敵の弱点を的確に突く戦い方をしていました。

3. 山県昌景の統率力

昌景が指揮する「赤備え」は、戦国最強クラスの精鋭部隊でした。彼は、兵士たちの士気を高め、戦闘力を維持するために、優れた統率力を発揮しました。

3-1. 部隊の士気を高めるリーダーシップ

昌景は、部隊の士気を高めるために、以下のような方法を採用していました。

方法	内容
戦場での先陣を務める	自ら最前線で戦い、兵士を鼓舞
厳格な規律	訓練を徹底し、軍の統制を強化
報酬と昇進	武功を挙げた者には褒美を与え、士気を維持
個別指導	兵士一人ひとりに戦い方を教え、強化

彼は、戦場での「恐れを知らぬ戦士」としての姿を示しながらも、部隊を統率する冷静な指揮官でもありました。

3-2. 兵士への徹底した教育

昌景は、兵士に対して戦術や戦闘技術の訓練を徹底して行いました。

訓練	内容
騎馬戦術	馬上での戦闘技術を磨く
集団戦闘	部隊単位での連携を強化
鉄砲・弓兵との連携	歩兵・鉄砲隊との協力を徹底

この訓練によって、赤備えは単なる精鋭部隊ではなく、戦国最強の組織化された軍団へと成長しました。

4. まとめ

山県昌景は、戦国時代における優れた戦略家であり、強力な統率力を持つ武将でした。

先陣部隊としての役割を果たし、武田軍の最前線で活躍
騎馬戦術や伏兵戦術を駆使し、敵を圧倒
部隊の士気を高め、赤備えを戦国最強の精鋭部隊に成長させた
戦場での勇猛な姿勢と冷静な戦略眼を兼ね備えたリーダー

昌景の戦い方は、後の武将にも影響を与え、赤備えは徳川家の井伊直政へと受け継がれていきました。

第4章：山県昌景の戦歴と戦略

山県昌景（やまがたまさかげ）は、戦国時代の武田家に仕え、数々の戦場で活躍した武将でした。彼は、武田信玄・勝頼のもとで精鋭部隊「赤備え」を率い、機動力を活かした戦術と冷静な判断力で多くの戦いに勝利しました。本章では、山県昌景が参戦した主な戦いと、その戦略・戦術について詳しく解説します。

1. 代表的な戦いと戦略

山県昌景は、武田軍の主力武将として、北条氏・上杉氏・徳川氏・織田氏との戦いに参戦し、その戦略的な指揮能力を発揮しました。 ここでは、彼が特に活躍した戦いを取り上げます。

年	戦い	対戦相手	山県昌景の役割
1569年	三増峠の戦い	北条氏康	伏兵を使った包囲戦術で北条軍を撃破
1572年	三方ヶ原の戦い	徳川家康	徳川軍を撃破し、家康を敗走させる
1574年	高天神城攻め	徳川家康	城攻めの先鋒を務める
1575年	長篠の戦い	織田信長・徳川家康	赤備えを率いて奮戦するも戦死

2. 三増峠の戦い（1569年） – 伏兵戦術の成功

背景

1569年、武田信玄は小田原城を攻めるが、北条氏康は徹底抗戦。
信玄は小田原城を攻め落とさず撤退を開始。
これを追撃した北条軍（約2万）が、三増峠で武田軍（約2万）と激突。

山県昌景の役割と戦略
山県昌景は、武田軍の伏兵部隊を率い、北条軍を包囲する作戦を展開。

戦術	内容
伏兵戦術	北条軍を狭い峠道に誘い込み、側面から奇襲
包囲戦術	北条軍の退路を断ち、四方から攻撃
撹乱戦術	わざと武田軍が撤退するように見せかけ、敵を誘導

結果

北条軍は挟み撃ちにされ、大損害を被る（約3,000人戦死）。
武田軍は被害を最小限に抑え、撤退戦に成功。
昌景の戦術は、戦場の地形を活かした「伏兵戦術」の成功例として高く評価された。

3. 三方ヶ原の戦い（1572年） – 騎馬突撃で徳川家康を撃破

背景

1572年、武田信玄は西上作戦を開始し、遠江・三河へ侵攻。
徳川家康が浜松城を出撃し、武田軍と対峙（徳川軍1万1千、武田軍2万7千）。

山県昌景の役割と戦略
昌景は、武田軍の先鋒部隊として「赤備え」を率い、騎馬突撃を仕掛けた。

戦術	内容
騎馬突撃	武田軍伝統の騎馬戦術で、徳川軍を一気に崩す
側面攻撃	迂回して徳川軍の横から突撃し、混乱を引き起こす
撹乱戦術	退路を塞ぐことで、敵の総崩れを誘発

結果

徳川軍は壊滅状態に陥り、家康は辛うじて浜松城に逃げ込む。
武田軍の圧勝となり、昌景の赤備えはその強さを証明。
徳川家康にとっては、「戦国最悪の敗戦」として語り継がれる戦いとなった。

4. 高天神城攻め（1574年） – 城攻めの名手としての活躍

背景

1574年、武田軍は遠江の要衝「高天神城」を攻める。
徳川家康にとっても重要な城であり、徹底抗戦。

山県昌景の役割と戦略
昌景は、武田軍の先陣として城攻めを担当。

戦術	内容
兵糧攻め	城の補給路を断ち、兵糧不足に追い込む
夜襲	夜間に奇襲を仕掛け、守備兵を混乱させる
持久戦	長期間の包囲により、城兵の士気を削ぐ

結果

城は落城し、武田軍の遠江支配が強化。
昌景は、城攻めの名手としての評価を高める。
この後、高天神城は徳川家康にとって「絶対に奪還すべき城」となり、武田家と徳川家の争奪戦が激化。

5. 長篠の戦い（1575年） – 最後の戦い

背景

1575年、武田勝頼が長篠城を攻撃し、織田信長・徳川家康連合軍と対峙。
織田・徳川軍は、最新戦術「鉄砲三段撃ち」を準備。

山県昌景の役割と戦略
昌景は、赤備えを率いて最前線で突撃を敢行。

戦術	内容
騎馬突撃	織田軍の防御陣に正面から突撃
突破戦術	織田軍の中央を突破し、乱戦に持ち込む
強行攻撃	士気を高め、全力での攻撃を指揮

結果

織田軍の鉄砲三段撃ちにより、赤備えは壊滅的な損害を受ける。
昌景自身も討死し、武田軍は大敗。
これにより、武田家の衰退が決定的となる。

6. まとめ

山県昌景は、戦国時代屈指の戦略家・武将として、多くの戦いで重要な役割を果たしました。

三増峠の戦い（1569年）では伏兵戦術を駆使し、北条軍を撃破。
三方ヶ原の戦い（1572年）では徳川家康を敗走させる。
高天神城攻め（1574年）では城攻めの名手として活躍。
長篠の戦い（1575年）では、赤備えを率いて最後の戦いに挑むも戦死。

昌景の活躍は、武田軍の強さを象徴するものであり、後世の軍略家たちにも大きな影響を与えました。 彼の戦術と戦歴は、まさに「戦国時代最強の精鋭部隊」を率いた武将の証です。

第5章：山県昌景の人物像と評価

山県昌景（やまがたまさかげ）は、武田家屈指の猛将として知られ、戦場では「赤備え」を率いて活躍した名将でした。彼の統率力、戦術眼、武田家に対する忠誠心は、戦国時代を代表する武将の一人として高く評価されています。本章では、山県昌景の性格や人物像、家臣や民衆からの評価、歴史的な位置づけについて詳しく解説します。

1. 山県昌景の人物像

山県昌景は、一般的に以下のような人物像を持つ武将として伝えられています。

1-1. 勇猛果敢な戦国武将

昌景は、戦場では常に先陣を切り、恐れを知らぬ戦いぶりを見せました。特に「赤備え」を率いたことで知られ、戦国最強の精鋭部隊の指揮官として敵軍から恐れられました。

項目	内容
戦場での姿勢	先陣を務め、騎馬突撃を率いる
戦闘スタイル	機動力を活かした突破戦術を得意とする
士気の維持	自ら戦場で奮戦し、兵士の士気を高める

彼の勇猛な戦いぶりは、武田信玄や勝頼からの信頼を厚くし、軍団の最前線を任されることが多かったことからも証明されています。

1-2. 知略に優れた戦略家

昌景は、単なる武闘派ではなく、地形や戦術を活かした戦略家としても優れていました。彼の戦術的な特徴として、以下のような点が挙げられます。

戦略的特徴	内容
伏兵戦術	三増峠の戦いで北条軍を挟み撃ちにする
機動戦術	騎馬突撃を活かし、戦場の主導権を握る
持久戦と心理戦	高天神城攻めで城兵の士気を削ぐ

戦場での冷静な判断力と、敵の動きを見抜く力に優れ、ただの猛将ではなく「知勇兼備の武将」としても評価されています。

1-3. 武田家への忠誠心

昌景は、武田信玄・勝頼に対して終生忠誠を誓い、最期まで武田家のために戦いました。特に、1565年の「武田義信事件」で兄・飯富虎昌が処刑された際も、昌景は信玄への忠誠を貫き、武田家に仕え続けました。

忠誠の証	内容
武田信玄への忠誠	兄の死後も信玄に仕え続け、重要な戦いで活躍
武田勝頼への支援	信玄死後も勝頼に従い、武田家存続のため奮戦
長篠の戦いでの戦死	最後まで戦い抜き、戦場で討死

昌景の忠誠心は、戦国時代において非常に重要な要素であり、多くの家臣が裏切る中で、最後まで武田家のために戦い抜いた武将の一人でした。

2. 家臣や民衆からの評価

2-1. 家臣からの評価

昌景は家臣や兵士たちからも「頼れる指揮官」として評価されていました。特に、赤備えの兵士たちに対して、以下のような対応を取ることで強い信頼を得ていました。

項目	内容
部下を大切にする	武功を挙げた兵には褒賞を与える
規律を重視する	厳格な軍規を徹底し、軍の統率を維持
戦場での信頼性	先陣を務め、部下と共に戦う姿勢を貫く

家臣からは「戦場では最も頼れる指揮官」と評価され、部隊の士気を高める重要な役割を果たしました。

2-2. 敵軍からの評価

昌景の率いる赤備えは、「戦国最強の部隊」として広く知られていました。特に、織田軍や徳川軍からは、「武田軍の中でも特に強力な部隊」として恐れられていました。

敵軍の評価	内容
織田軍の認識	「赤備えは強力な精鋭部隊である」
徳川軍の評価	「山県昌景の指揮する軍は恐ろしく強い」
戦場での恐怖	赤備えが突撃すると敵軍が崩れることが多かった

彼の名声は戦国時代において非常に高く、多くの武将が彼の戦い方を研究し、後に井伊直政が赤備えを継承するほどでした。

3. 歴史学における評価

3-1. 戦国武将としての評価

昌景は、戦国時代の武将の中でも、特に以下の点で評価されています。

戦国武将としての評価	内容
戦闘力の高さ	戦場での突撃戦術と騎馬戦を駆使
戦術的な知略	伏兵戦術や機動戦を活用
忠誠心の強さ	武田家に最後まで仕え、戦死

特に、彼の戦術は多くの軍事研究者からも高く評価され、「日本の戦国時代における最も優れた騎馬軍団の指揮官の一人」と位置づけられています。

3-2. 江戸時代以降の評価

江戸時代になると、昌景の戦い方や統率力は「武士の理想像」として評価されるようになりました。特に、徳川家康の家臣・井伊直政が昌景の赤備えを継承し、「最強の武士団」としての名声を引き継いだことが大きな影響を与えました。

江戸時代の評価	内容
井伊直政への影響	赤備えの戦術を引き継ぎ、徳川家最強部隊を形成
軍記物での評価	「忠義の士」「勇猛な将」として描かれる
武士道の模範	戦場での覚悟と忠誠心が称賛される

彼の生き様は、後の武士たちにとって「理想の武将像」として語り継がれました。

4. 総括

山県昌景は、戦国時代屈指の武将として、以下の点で高く評価されます。

赤備えを率い、最強の精鋭部隊を形成
戦場での勇猛果敢な戦いぶりと、冷静な戦略眼を持つ
武田信玄・勝頼に対する忠誠を貫き、長篠の戦いで戦死
家臣や敵軍からも「恐るべき指揮官」として認識される
井伊直政に影響を与え、赤備えの伝統を後世に残した

昌景の生き方は、「戦国武将の理想像」として、今なお語り継がれています。

山県昌景の総括まとめ

山県昌景（やまがたまさかげ）は、戦国時代において武田信玄・武田勝頼に仕えた名将であり、武田軍最強の精鋭部隊「赤備え」を率いたことで広く知られています。彼の勇猛果敢な戦いぶり、戦略的な知略、部下を統率する能力は、戦国時代の中でも極めて高く評価されています。昌景は、数々の戦いで活躍し、最期は長篠の戦いで討死しましたが、彼の「赤備え」は後の井伊直政に継承され、日本史に名を刻むこととなりました。

本章では、山県昌景の生涯・功績・戦略・評価を総合的に振り返り、彼が戦国時代に果たした役割と歴史的な意義について詳しく解説します。

1. 山県昌景の生涯と武田家での役割

1-1. 飯富家から山県家へ

山県昌景は、もともと武田家の家臣である「飯富（おぶ）氏」の出身で、武田信玄の重臣・飯富虎昌（おぶとらまさ）の一族とされています。

項目	内容
出身	甲斐国（現在の山梨県）
生年	不詳（1500年代前半）
旧姓	飯富源四郎
改名	1565年に「山県昌景」と改名
主君	武田信玄 → 武田勝頼

1565年、武田義信謀反事件に連座し兄・飯富虎昌が処刑された際、昌景は「飯富」の姓を捨て、「山県昌景」と改名しました。この改名は、武田家への忠誠を示し、新たな武将としての道を歩む決意の表れだったと考えられます。

1-2. 武田軍の主力としての活躍

改名後、昌景は武田軍の重要な戦力として、多くの戦いに参加しました。特に、「赤備え」を率いることで、武田軍の中でも屈指の精鋭部隊の指揮官となりました。

年	戦い	山県昌景の役割
1569年	三増峠の戦い	伏兵を活用し、北条軍を撃破
1572年	三方ヶ原の戦い	騎馬突撃で徳川家康を敗走させる
1574年	高天神城攻め	先鋒として城攻めを担当
1575年	長篠の戦い	織田軍の鉄砲隊と激突し、討死

昌景は、戦場では常に先陣を切る役割を担い、攻撃的な戦術を得意としました。

2. 「赤備え」を率いた指揮官としての功績

2-1. 赤備えの特徴

山県昌景が指揮した**「赤備え」**は、戦国時代屈指の精鋭部隊でした。

項目	内容
装備	甲冑・槍・馬具などを赤で統一
士気	武田軍最強のエリート部隊
戦術	騎馬突撃、伏兵戦術、包囲戦術
影響	井伊直政（徳川家）に継承

赤備えは、視覚的なインパクトも大きく、敵軍に「強敵」としての印象を与えました。 昌景は、優れた統率力でこの部隊をまとめ上げ、数々の戦いで圧倒的な戦果を挙げました。

2-2. 赤備えの戦術

昌景の戦術は、単なる突撃戦だけでなく、以下のような戦法を駆使しました。

戦術	内容
伏兵戦術	三増峠の戦いで、北条軍を包囲・撃破
騎馬突撃	三方ヶ原の戦いで、徳川家康軍を壊滅させる
包囲戦	高天神城攻めで、敵の士気を削ぐ
正面突破	長篠の戦いで、敵陣への総攻撃を指揮

これらの戦術を駆使し、昌景は戦国時代屈指の戦略家として名を馳せました。

3. 戦国武将としての評価

3-1. 家臣や敵軍からの評価

山県昌景は、味方の家臣からは「頼れる指揮官」、敵軍からは「恐るべき武将」として評価されました。

視点	評価
武田軍の家臣	「赤備えを完璧に統率する名将」
織田・徳川軍	「最も恐るべき突撃部隊の指揮官」
武田信玄	「軍団の中で最も勇猛な武将」

また、昌景は厳格な軍律を持ちながらも、部下を大切にし、彼らの士気を維持する手腕にも優れていました。

3-2. 戦国時代への影響

山県昌景の戦い方や指揮した「赤備え」は、戦国時代において非常に大きな影響を残しました。特に、赤備えの戦術は、後の井伊直政（徳川家）の赤備え部隊へと継承されました。

武将	赤備えの継承
山県昌景	武田家の赤備えを率いる
井伊直政（徳川家）	赤備えを継承し、徳川最強部隊を編成
井伊直孝	大坂の陣で赤備えが活躍

この影響は、江戸時代にも続き、赤備えは「最強の軍団」の象徴として語り継がれました。

4. 総括

4-1. 山県昌景の歴史的意義

山県昌景は、戦国時代において、以下の点で極めて重要な役割を果たしました。

武田軍の最精鋭部隊「赤備え」を率い、多くの戦で勝利に貢献
三増峠の戦いや三方ヶ原の戦いで戦略的な勝利を収める
長篠の戦いで最期まで戦い抜き、赤備えの名誉を守る
その戦術と軍団編成が、後の井伊直政の赤備えへと継承される

4-2. 現代における評価

昌景の生き方は、現代の歴史研究においても、「戦国最強の騎馬武将」「知勇兼備の猛将」として高く評価されています。

彼の名は、「戦場で最後まで戦い抜いた忠義の将」として、今なお語り継がれています。