戦国時代の合戦における「非戦闘員(従者)」の割合と役割

戦国時代の合戦では、単に武士や足軽だけでなく、多くの非戦闘員(従者)が随行していたことが知られています。これらの従者の割合は、全軍の30~50%に及ぶこともあったと考えられています。


1. 戦国時代の軍勢の構成

戦国大名が動員する軍勢は、大きく以下のような構成になっていました。

区分役割割合(概算)
主力戦闘員武士・足軽・弓兵・鉄砲兵など50~70%
補助戦闘員旗持ち、使者、槍持ち、馬廻り衆など10~20%
非戦闘員(従者)兵站要員、雑兵、医療係、荷駄隊、料理人など30~50%

このように、実際に戦闘に関わる者は半数程度であり、残りは補助要員や兵站を支える人々でした。


2. 合戦に参加しない従者の種類と役割

戦において、戦闘行為を直接行わない「従者」には、さまざまな役割がありました。

従者の種類役割
荷駄隊(にだたい)兵糧や武器・弾薬、馬の世話などの補給を担当。
医療係負傷者の手当てや薬の調達を担当。
馬係(厩務)馬の世話や、戦場での乗り換え用の馬の管理。
輜重(しちょう)隊戦場の後方で食事を準備したり、戦後の戦利品管理を担当。
伝令・使者大将や部隊間の伝達を担う。戦闘には基本的に参加しない。
雑兵・草履取り武士の身の回りの世話をする下級従者。

特に荷駄隊の役割は重要であり、戦の勝敗を左右する要因となることもありました。


3. 戦国時代の軍勢と従者の比率の変遷

戦国時代の初期と後期では、軍勢内の非戦闘員の割合が変化していきました。

時期特徴非戦闘員の割合
戦国時代初期(15世紀)兵站が未整備、地侍主体の戦30~40%
戦国時代中期(16世紀)戦国大名が組織化、合戦が長期化40~50%
戦国時代後期(1570年以降)兵站強化、足軽の主力化30~40%

戦国後期になると軍隊が組織的になり、戦闘員と非戦闘員の役割が明確化され、従者の割合がやや減少しました。


4. 戦闘における従者の重要性

(1) 兵站の維持

  • 長期間の戦いでは、兵糧の補給が極めて重要で、補給が滞れば戦意が低下し敗北に直結した。
  • 織田信長は兵站を重視し、戦場近くに補給拠点を作るなどの工夫をした。

(2) 負傷兵の救護

  • 戦場での負傷率は非常に高く、医療従者がいなければ戦力の回復が困難
  • 「戦場での治療が受けられるか」が、兵士の士気に大きく影響を与えた。

(3) 戦場整理と撤退支援

  • 戦闘終了後の撤退時に、非戦闘員が負傷兵を回収したり、撤退ルートを確保する役割を担った。
  • 撤退時に荷駄隊が壊滅すると、敗軍は崩壊しやすい

5. まとめ

戦国時代の合戦では、全軍の30~50%が非戦闘員(従者)で占められていたと推定されます。彼らは直接戦闘には関与しないものの、兵站維持、負傷者の治療、物資補給など、戦いの勝敗に直結する重要な役割を果たしていました。特に、大規模な戦闘では非戦闘員の存在が軍の継戦能力を左右するため、単なる雑用係ではなく、戦国大名の戦略の一環として組織されていました。

結果として、戦国時代の軍勢は単なる戦闘集団ではなく、後方支援を含めた総合的な組織体として運用されていたのです。