彦根城の構造:詳細解説

彦根城は、江戸時代初期に築かれた平山城(丘陵地に築かれた城)であり、防御と実用性を兼ね備えた巧妙な設計が特徴です。本記事では、彦根城の構造について、城郭全体の配置、天守の特徴、城門・櫓・石垣・堀・城下町など、多角的に詳しく解説します。


1. 彦根城の全体構造

彦根城は、標高約50メートルの彦根山を中心に築かれ、城の防御を強化するために複数の郭(くるわ)が配置されています。主要な部分は以下の通りです。

名称役割・特徴
本丸城の中核。天守が建つ最重要区画
二の丸本丸の防御を強化し、家老屋敷などが配置される
西の丸防御拠点であり、兵の駐屯地
三の丸外郭部であり、町人地と隣接
出曲輪(でぐるわ)防御のための張り出し部
大手門・京橋口主要な出入口(虎口)

2. 天守の構造と特徴

彦根城の天守は、現存12天守の一つであり、1952年(昭和27年)に国宝に指定されています。その特徴は以下の通りです。

2-1. 天守の基本仕様

構造仕様
形式連結式望楼型天守
階数三重三階(内部は地階を含め四階構造)
高さ約21メートル
屋根入母屋破風、唐破風、千鳥破風を組み合わせた美しいデザイン
材質主に木造(ヒノキ、ケヤキなど)
本瓦葺(ほんがわらぶき)

2-2. 彦根城天守の特徴

彦根城天守は、実用性と美しさを兼ね備えた設計が特徴的です。

  • 望楼型天守
    最上階が展望所となっており、敵の動向を監視する役割がある。
  • 複雑な屋根構造
    **千鳥破風(ちどりはふ)・唐破風(からはふ)・入母屋破風(いりもやはふ)**など、多様な破風(はふ)を組み合わせ、美観を高めている。
  • 狭間(さま)の配置
    壁には鉄砲狭間や矢狭間が設けられ、戦闘時の防御に活用。
  • 石落とし
    天守の一部には「石落とし」があり、攻城兵を直接攻撃できる。

3. 城門・櫓(やぐら)

彦根城には、多くの城門や櫓(やぐら)が配置され、防御力を強化しています。

3-1. 主要な城門

城門名特徴・役割
表門(大手門)城の正面入口。枡形門で厳重な防御
京橋口門京都方面の入口。重要な虎口
太鼓門本丸への最終関門
山崎門北側の裏門

城門の多くは枡形(ますがた)構造になっており、敵が直進できないように作られています。

3-2. 主要な櫓

櫓名特徴
天秤櫓城のバランスを取るために建てられた特徴的な二重櫓
太鼓門櫓城の重要な防御拠点
西の丸三重櫓防御の要

**天秤櫓(てんびんやぐら)**は、左右対称の形をしており、彦根城の象徴的な建築物の一つです。


4. 石垣

彦根城の石垣は、自然の地形を活かした**野面積み(のづらづみ)と、精巧な打込み接ぎ(うちこみはぎ)**が使われています。

石垣の種類特徴
野面積み自然石をそのまま使用し、強固な防御力を発揮
打込み接ぎ石を加工し、より安定した構造に

石垣は高さが10~15メートルほどあり、敵の侵入を困難にしています。


5. 堀と縄張り

彦根城には、防御のための堀が三重に設けられています。

堀の種類特徴
内堀本丸・二の丸を囲み、最も重要な防御機能
中堀城の中心部と城下町を分離
外堀城全体を囲み、広範囲の防御を担当

彦根城の外堀には「京橋口」や「船町口」があり、水運による物資輸送の役割も果たしていました。


6. 城下町と関連施設

Wikipediaより参照:玄宮園から天守を望む

彦根城の周囲には、城を中心とした城下町が形成されました。

施設特徴
楽々園彦根藩主の別邸。庭園が美しい
玄宮園(げんきゅうえん)本丸の北側に位置する庭園
埋木舎(うもれぎのや)井伊直弼が若い頃を過ごした場所

城下町は、城の南側に広がり、商人や職人が住むエリアとして発展しました。


7. まとめ

彦根城は、江戸幕府の西国防衛の要として築かれた城であり、防御と美しさを兼ね備えた独特の構造が特徴です。以下の点が特に重要です。

  • 天守は国宝であり、優れたデザインと実戦向きの構造を持つ
  • 枡形門や櫓が巧みに配置され、城全体の防御を強化
  • 野面積みの石垣や三重の堀が、堅固な防御を実現
  • 城下町と一体となった都市設計がなされている

このように、彦根城は戦国時代から江戸時代にかけての城郭技術の粋を集めた城であり、現代においてもその価値を高く評価されています。

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